医療現場からの提言

2007年

vol.11 妊娠をしたら「かかりつけ医」受診を

救急搬送の妊婦が医療機関に受け入れ拒否をされるケースが目立ちますが。

吉岡:

残念ながら県内でも数例あったことが報告されています。県の妊婦救急搬送実態調査によると、昨年一年間で八百二十七件の妊婦搬送があり、そのうち約九割が最初に要請した医療機関に搬送されています。残りの一割が、数回の受け入れ拒否をされたケースにあたります。

拒否の理由は、どのようなことですか。

吉岡:

医師が不在、手術中という理由の他、初診の患者さんは診れないという理由が多いようです。前者はともかく、初診を理由に受け入れ拒否をすることについて、一般の方々は疑問を持たれると思いますが、実は、医療機関側にとって重大問題なのです。

お産は妊婦や胎児にとって命懸けの行為です。私も産科医として長年、その現場に立ち会ってきましたが、今の妊婦さんはお産に不安を感じることはあっても、命懸けというリスクがあることについての認識が弱いだけでなく、リスクは医師が負うべきという傾向が強いように見受けられます。そのため、何か問題が起きると訴訟になるのです。ですから、医療機関が妊婦や胎児の状況がよくわからないまま、初診の患者さんを救急隊の電話一本で受け入れることに抵抗感を持つのは、妊婦死亡や死産などの事故が起きた場合のリスクを考えると、やむを得ないとも思われます。

医師不足も問題ですね。

吉岡:

今、産科医や助産師などのスタッフ不足で分娩を取りやめる病院や閉院する産科医院が急増しています。その原因の一つとして、病院勤務の産科医の過酷な勤務環境があげられます。週平均六十九・三時間という労働時間は過労死認定の目安とされる六十~六十五時間を超えていて、離職する医師も多く、その負担が残った医師にかかってくるといった悪循環が見られます。もはや、産科医療は医師の献身的努力だけでは解決できないところに立ちいたっているのです。

万が一の救急搬送を想定した場合、どうすればよいですか。

吉岡:

搬送拒否となるケースの多くは、初診ということです。つまり、妊婦さんが妊娠後に医師の検診を受けていない場合、医療機関は受け入れを躊躇(ちゅうちょ)します。通常、妊婦さんは、かかりつけの産科医を持っておられるはずで、妊婦の状態をよく知っている「かかりつけ医」がいれば緊急時にも対応してもらえます。また、救急医療機関も安心して受け入れることができます。

妊娠後は、定期的に「かかりつけ医」を受診するようにしてください。

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