医療現場からの提言

2007年

vol.09 うつ病について

最近、うつ病が話題になっていますが。

森本:

確かにここ何年間、うつ病やその治療法に関することがマスコミなどで取り上げられることが多いように思います。日本における自殺者数がなかなか減らず、自殺既遂者の中にうつ病を発症している場合が多いということも理由としてあるのかも知れません。私は、うつ病のことが話題になることを悪いことだとは思わないのですが、治療については情報の発信側も一般の受け手側も関心が薬物療法に偏りすぎているのではないかと思えて気がかりです。最近は、患者さんの口からSSRIやSNRIなど、治療薬に関する専門用語が出てくることも珍しくありません。もちろん、うつ病の治療において薬物療法の果たす役割は大きく、それらについて知ることは悪いことではありません。しかし、薬物療法を重視しすぎるあまり普段の生活を見直すことが軽視されるようではいけません。

日常生活の見直しが重要ということでしょうか。

森本:

生活習慣病と呼ばれる疾患群がありますが、この病気の治療に生活習慣の改善が不可欠なことはよく知られています。私は、うつ病の治療にも是非これと同じ考え方を持つべきだと思っています。例えば、睡眠時間を削ることや飲酒の習慣が病気の発症や回復の妨げに関与していると考えられる場合には、十分な睡眠や、酒を断つことを実行するということです。何故こんな当たり前のことをあえて言うのかと思われるかも知れませんが、日々繰り返されている生活習慣を変えることは予想外に困難だからです。場合によっては変えるべき生活習慣に気づかないこともあるし、変えたくても変えられない事情、場合もあるかも知れません。しかし、生活習慣の改善なしにうつ病から回復できないことがあるのも事実です。

発病の要因、また、注意すべきことは。

森本:

現代社会そのものがうつ病発症の温床になっている点にも注意を払うべきです。生活が大変効率的になり、その結果何にでも使える自由な時間がとても少なくなっており、普段想定されていないことが起きたときに対応できない体質が出来上がっていると考えられるからです。また、不幸にしてうつ病を発症したとき、回復に使える時間も限られたものになっているのではないかと思います。生活習慣は、薄々問題だと気づいていても病気になるまでの長い間は大丈夫だったため、その危うさに気づきにくいという落とし穴があります。現在うつ病の治療をしている方も、またそうでない方も一度普段の生活を振り返ってみることをお勧めします。うつ病は極めて複雑な病気です。今回、話したことはその一つの側面に過ぎません。心配なことがあったらためらわずに医療機関を受診して相談をしてください。

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